死に至る子どもの心臓病、国内初承認の「補助人工心臓」への期待高まる
治癒を期待できる手段が心臓移植しかない重症の心不全があります。しかし、ドナーの提供がなければ心臓移植を受けることができないため、待っている間に亡くなってしまうケースも少なくありません。補助人工心臓は待機中の生命維持を担う重要な医療機器です。
この度、小児用の補助人工心臓に対する治験の結果が発表されました。厚生労働省は今年6月、ドイツ・ベルリンハート社の「EXCOR」を国内で初めて小児用の補助人工心臓として承認。同機器については2011年より東京大医学部付属病院、大阪大医学部付属病院、国立循環器病研究センターで医師主導治験が行われており、東京大医学部付属病院の小野稔教授は8月29日、重症心不全の子ども9人全員の生存を伝えています。平均8か月半装着し、中には2年を超えるケースもあるといいます。同機器の承認以前、国内に重症心不全の子どもが1か月を超えて使える補助装置がなかったとこを考えると、大きな前進といえます。ここでは補助人工心臓の役割を確認しておきましょう。
◆心臓のポンプ機能を補う役割
通常、心臓は連続して休むことなく動いていなくてはなりませんが、急性あるいは慢性心不全に陥ってしまった場合、心臓の代わりに血液循環のためのポンプ機能を補うことが必要になります。このための治療装置が補助人工心臓です。小型化されており、身体に取り付けてある程度自由に行動することができます。
しかし、補助人工心臓は、あくまでも心臓移植を待つ患者さんが移植を受けるまでの間、生命を維持するためのもので、永久に使えるものではありません。
◆心臓移植までの生命維持の役割
日本では、2009年の臓器移植法改正によって、小児重症心不全の患者に国内心臓移植の道が開かれました。しかし、課題もありました。法的に心臓移植の途が開けても、実際にドナーの提供がなければ移植手術を受けることはできず、待機期間が長引けば患者さんの生命にも影響するからです。
当初、日本には成人用の人工心臓しかありませんでしたが、日本心臓血管外科学会や小児循環器学会などが、小児用補助人工心臓として世界的にニーズの高い、「EXCOR」の認定を厚生労働省に要請し、実現にこぎつけた経緯があります。
◆実績のある「EXCOR」
ドイツ・ベルリンハート社の「EXCOR」は、1990年以来、これまで世界で1100人余りの子どもたちに埋め込まれて成果を得てきました。新生児から成人までのすべての患者に適応できる機器で、心臓移植手術が行われるまでの生命を維持することができます。基本的に臓器提供されるまでの待機時間に使用されるものですが、補助人工心臓の機械的支援によって心臓の機能が改善する可能性もあるといいます。
今回の治験の結果は、心臓移植を必要とする患者さんを勇気づけるものに違いありません。小児重症心不全の患者さんがより良い医療を受けられるようになることが期待されています。
監修:岡本良平医師(東京医科歯科大学名誉教授)
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