3歳までの食べ方大事 健口(けんこう)づくり
康寿命を延ばす条件として歯科の重要性が注目される中、マスダ小児矯正歯科医院(佐賀県武雄市)の増田純一院長(72)が、無歯期からの「口づくり」について動画(DVD)付きで解説した「Health Dentistry(健口(けんこう)歯科)‐0歳から”噛(か)む”で健康長寿」(グレードル、5400円)を刊行した。かむことの大切さについて、3回にわたり紹介する。初回は「3歳までの食べ方で将来の口が見える」と語る増田院長に、動画のポイントを語ってもらった。
■無歯期
上下に2本の歯が生えるぐらいまでの「無歯期」(0~1歳前ごろ)。乳児2人が、スプーンで離乳食を食べている。一人は与える側がスプーンをいったん口の前で止めるため、乳児は自分の力で上唇を使い、食べ物をくわえこんでいるが、もう一人はツバメが子どもに餌を渡すように、スプーンを口の中に押し込まれている。
「かむことはまず、唇を使って食べ物を口の中に入れる捕食から始まる。食べ物を口の中に放り込む方が、食べさせる方は早くて楽だが、そうすると唇を閉じる力や舌、首などの筋肉が鍛えられない。将来の『お口ポカン』や、首の据わりの遅れなどにつながります」(以下、増田院長)
■前歯期
上下に4本ずつの前歯が生える「前歯期」(1~1歳半ごろ)の幼児たち。皿の上にある食べ物を手づかみで食べている。
「自分の手で食べ物を口に運び、前歯でかみ切ることを繰り返すことで、脳が自分の一口の量を覚える時期。食べ物は散らかりますが、自由に食べさせてください。なお、椅子で食べさせるときは、足をぶらぶらさせないのがポイントです」
■奥歯期
奥歯でかめるようになる「奥歯期」(1歳半~2歳ごろ)。幼児がスプーンを使い、ご飯とおかずを交互に口に入れ、もぐもぐ咀嚼(そしゃく)している。
「奥歯があって初めて咀嚼できます。歯の下にある歯根膜を通して食べ物の硬さや大きさを認識できるようになるこの時期は、かむ力や咀嚼のリズムを身に付けさせることが重要です。これがおそろかになると、十分にかまないまま、次々と食べ物を口の中に入れるような習慣が身に付き、将来の肥満やさまざまな疾病につながります」
■完成期
20本の乳歯が生えそろった「完成期」(3歳以降)。リズミカルに口を動かす子の一方で、リズムも悪く力強さのないかみ方をする子、口の中の食べている物が見えてしまう子、口元などに力を加えて物をのみ込む子もいる。
「不自然な食べ方には、虫歯や、舌や唇の使い方を習得していないなど、何らかの原因があります。それはかみ合わせや歯並びの悪化、顔や体のゆがみなどを招くため、単に食べ方がおかしい、だけでは済まされません。きれいな口元をつくるのは保護者の責任です」
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増田院長は「正しいかみ方は学習して覚えるものだから、食事は子どもだけで食べる『孤食』は避け、大人が見守ってほしい」と語ります。(中)(29日付)では、増田院長へのインタビューを掲載します。
=2015/04/28付 西日本新聞朝刊=