ラグビー2019年ワールドカップ(W杯)日本大会の開催地に選ばれた岩手県釜石市。歓喜に包まれた2日深夜のパブリックビューイングでは、腕組みして静かに開催決定の中継場面に見入る歯科医、佐々木憲一郎さん(47)の姿があった。

【2019年ラグビーW杯開催地】

 佐々木さんはW杯競技場建設予定地の同市鵜住居(うのすまい)町で診療所を営む。11年の東日本大震災の津波で、鵜住居では600人近い死者・行方不明者を出したが、佐々木さんは4000人以上のカルテと遺体の歯の照合作業を続け、50人以上の身元を割り出した。

 鵜住居は壊滅的な被害を受け、佐々木さんの診療所兼自宅も津波で浸水した。他地区での診療再開の誘いもあったが、「この場所にとどまれば、戻る決心をする人もいるかもしれない」と決断。震災の半年後に同じ場所で診療を再開させた。

 釜石で生まれ育った佐々木さんにとって、ラグビーは特別な存在だ。新日鉄釜石が日本選手権で7連覇した1970~80年代当時、佐々木さんはテレビ中継に見入り、優勝パレードに興奮した。「頑張れば日本一になれるんだという夢を与えてくれた」と振り返る。

 W杯は釜石の子どもたちに夢を与えてくれる大きなチャンスだと受け止めているが、市内ではなお4632人(1月末現在)が仮設住宅で暮らす。「W杯だけが注目され、まだ前向きになれない被災者を置き去りにしてはいけない」。地元のまちづくり協議会の役員を務める佐々木さんの願いは、W杯をきっかけに復興が加速すること。大会が成功し復興した街に活気が戻ったときこそ、もろ手を上げて喜べると思っている。【中田博維】

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