突然の豪雨や、急激な炎天下に見舞われたかと思えば、今度は大型の台風が出現したりと、不安定な天候が続いている今日。日常的に感じる疲れに加え、異常気象による疲労が溜まってくると、無性に「甘いモノを食べたい!」と思ってしまう人もいるかもしれない。

夏の疲れをケアするために、甘くて美味しいスイーツなどを食べたくなる気持ちはわかるが、食べ物をしっかり噛んで味わうには”健康な歯”が欠かせない。ここで重要なのは”むし歯がない”ことではなく「健康な歯を保つためのむし歯予防」に役立つ情報を知って、継続的に実践することだろう。

 そこで、ベル歯科医院の歯科医師であり、日本フィンランドむし歯予防研究会会長としても活動されている鈴木彰氏に、「むし歯予防」に関するお話を伺った。

――むし歯予防に「キシリトール」が良いという情報を聞いたことがあるのですが、そもそもキシリトールとは、どのようなものなのでしょうか?

 キシリトールは、天然素材の甘味料です。甘さは、砂糖と同等レベルです。イチゴやブロッコリーにも含まれています。工業的には、白樺、樫、トウモロコシなどを原料として作られています。

――キシリトールは甘味料だったのですね! 甘味料という言葉に、あまり良いイメージがないのですが、人間の体に悪影響はありませんか?

 人間の体内(肝臓)でもキシリトールが合成されています。輸液に使うこともあり、まったく安全な物質です。

――キシリトールは甘味料なのに、むし歯予防に効果的な物質だと言われていることが不思議です。たとえば「キシリトールの摂取で子どものむし歯が減った」などの事例はあるのでしょうか?

 昭和62年と平成23年の過去26年間を比較すると、すべての年齢でむし歯経験歯数(現在むし歯+過去にむし歯で治療した本数)は減少しています。たとえば、12歳児では、平均4.9本から1.4本に約70%減りました。この理由は、歯の清掃習慣が定着したこと、フッ化物入りの歯磨材が普及したこと、重症化する前に歯科治療を受けるようになったことの効果と考えられますが、1997年(平成9年)に日本でキシリトールガムが発売されて定着したことも要因として考えられます。

――最後の質問になりますが、日本の学校などで、歯の健康やキシリトールの摂取について教育する機会はあるのでしょうか?

 日本学校歯科医会では、学校現場で、歯や口の健康に関する指導や啓蒙活動を継続的に行っています。一部の学校では、キシリトール摂取を指導したり、むし歯予防の効果を検証しています。

――むし歯予防に有効な物質として、教育現場でもキシリトールの摂取が推進されていたとは、知りませんでした。教えていただき、ありがとうございました。

重冨歯科医院