女性向けの賃貸住宅が進化している。防犯対策だけでなく、自然光でメークができる洗面室や広い収納スペースなど女性が楽しく暮らせる工夫を凝らした物件が全国的に広がっているのだ。背景にはオーナー側の「自分が住みたくなるような住宅を経営したい」という意識変化があるという。(加納裕子)

 ◆心遣いをプラス

 オートロックの玄関を入ると、上品なカーペット敷きの共用廊下が延びる。部屋のドアを開けてまず目に留まるのは、靴やブーツがたくさん入る鏡付きのシューズインクローク。ブーツをはく際に使える折りたたみ椅子も付いている。

 今年11月に入居を開始した京都市下京区のシングル女性向けの賃貸住宅「ラシーネ五條」。スタイリッシュなバスルームや、自然光が差し込む場所に大きな鏡がついた化粧カウンターなど、女性が魅力を感じる機能をいくつも備えている。

 1DKの1室に住む歯科医師、稲田有紀さん(34)は「住み心地がすごくいいんです」。「寝室が別」を条件に探し、この物件を見つけた。特に重宝しているのは、消臭機能のついた広いウオークインタイプのクローゼット。手入れの楽なIHコンロの対面式キッチンも気に入っているという。

 オーナーのカラーセラピスト、西村二三子さん(53)は「女性がゆとりを持って住める、心遣いのある賃貸住宅にしたかったんです」。家賃は月6万6千円(32平方メートル)から8万8千円(45平方メートル)。周辺の相場より5千円程度高いというが、空き室はない。

 ◆オーナーも変化

 女性向け賃貸は平成23年6月、大和ハウス工業(大阪市北区)が単身女性向けに「防犯配慮型賃貸住宅フォー・ウーマン」として業界で初めて提案。警備会社によるホームセキュリティーや録画付きインターホンなどの防犯機能に加え、衣類の多い女性のために広い収納スペースを確保するなどの工夫を取り入れた。

 同社によると、今年10月末までの契約戸数は約8万戸。その後も女性が暮らしやすいようなリニューアルを続けており、24年7月からは三面鏡を付けたり、シューズボックスなどのこまやかな収納を拡充したりできるようにした。担当者は「全国的に人気があり、男性が同居しても住みやすいと好評です」と胸を張る。

 パナホーム(大阪府豊中市)では24年7月、住居へのこだわりが強い女性の価値観やニーズをより正確に把握しようと、社内研究組織を設立。20~50代の女性への調査から、たとえば単身なら「洗面所でメークすると照明が暗くて色が分かりにくい」、子供がいる場合は「食事の支度中に子供の様子が分からず心配」といった不満を抱いていることが分かったという。

 こうした調査結果を生かして女性視点の賃貸住宅「ラシーネ」を首都圏中心に展開し、今年9月末までに約750戸を受注した。担当者は「女性オーナーから、自分の住みたいような物件にしたいとの希望を聞くことも増えました。周辺の賃貸物件と差別化を図ることで、空き室を回避できるというメリットもあります」と話している。

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