本当は恐ろしい歯周病
日本人の実に8割が罹患しているという歯周病。実は、多くの病の引き金になる恐ろしい疾患なのだ。この病のメカニズムと最新治療に迫る。
■日本人の8割がかかっている病気
「もう少し来るのが遅かったら、歯が全部なくなってましたよ! 」と担当医から厳しい指摘を受けたのは、会社員のAさん(43歳)。病名は「歯周病」だ。
歯周病とは、かつて「リンゴをかじると血が出ませんか? 」のフレーズで知られた歯槽膿漏のこと。今は医学的に正しい疾患名である歯周病と呼ばれるのが普通である。
この病が厄介な点は、かなり進行しないと痛みや腫れなどの自覚症状が現れないこと。サイレント・ディジーズ(沈黙の病気)と呼ばれる由縁である。Aさんも高校時代、すでに校医に歯周病を疑われる症状を指摘されていた。しかしこれといった自覚症状がなかったため、本人も親も深刻に受け止めず、壮年になるまで放置しておき、結果、重症化させてしまったのだ。
現在、日本人の8割が歯周病に罹患しているといわれている。もはや誰にとっても他人事ではなく、あなたもかかっているかもしれないのだ。しかし実際、どんな病気なのか、よくわかってない人も多いだろう。
「歯周病は歯の周囲に付着した細菌の塊、プラークが原因で発症します。歯と歯茎の間にプラークが停滞して、歯肉が赤く腫れ、炎症を起こします。進行すると、歯周ポケットと呼ばれる歯と歯肉の境目の溝が深くなり、歯を支える土台である骨(歯槽骨)が溶け、グラグラし、最終的には抜け落ちてしまう病気なんです」と説明してくれたのは、慶應義塾大学医学部歯科・口腔外科学教授の中川種昭医師。
虫歯と同じく細菌感染によって引き起こされる感染症なのだ。発症年齢は35歳以上から増え始め、40代になると急激に増加、60~64歳あたりがピークという。歯周病で歯を失う人は全体の4~5割で虫歯よりも多いという
「50代以上になると、圧倒的に歯周病が原因で歯を失う人が多くなる。年を取ってから後悔しないためにも、早めの予防と治療が欠かせません」(中川医師)