認知症発見、歯科医が一役 患者の変化をチェック
高齢者の認知症や虐待の早期発見に向け、県歯科医師会と県社会福祉士会が連携する新たな取り組みが始まった。長期にわたって1人を診ることが多い歯科医師は、患者の変化に気付きやすい潜在的な”発見機能”があるという。そこに着目し、歯科医院のスタッフが専用の「連携チェックシート」に記入し、近くの地域包括支援センターの社会福祉士らに相談する。
チェックシートは「予約日なのに来院しない」「適切な口腔(こうくう)ケアができていない」「表情が乏しく、険しくなった」など16項目。裏面には項目ごとに予測されるリスクが表記されている。歯科医師や受付スタッフ、歯科衛生士が患者の様子を確認し、該当すれば記入する。5月下旬から1年間、県歯会に所属している一部の医院で運用していく。
取り組みは、2010年に静岡市清水区で開かれた地域包括ケアシステムの充実を目指す「医療・介護・福祉の連携会議」がきっかけ。両会はこれまでシンポジウムや研修などを重ね、地域の医療福祉の向上に向けた連携の在り方を模索してきた。歯科医に福祉の視点を持って診察してもらおうと、県中部の合同勉強会のメンバーがチェックシートを考案した。
県歯科医師会地域保健部の井川利幸理事は「チェックシートによって歯科医が地域包括ケアシステムの構成員としての自覚を持ち、問題意識を持って患者を診察するようになる」と効果を話す。チェックシート作成に当たった県社会福祉士会地域包括ケア推進委員会の安藤千晶理事は「福祉職だけでは見落としてしまう高齢者の問題を、歯科医と協力することですくい上げることができる」と期待を寄せる。
地域包括支援センター 医療、介護、福祉、生活支援などに関するさまざまな機関が連携して、高齢者が自分らしく暮らせる地域を目指す国の「地域包括ケアシステム」の中核機関。社会福祉士や保健師、主任ケアマネジャーが常駐し、要介護者の実態把握やケアプランの策定のほか、総合的・継続的な支援に向けた関係機関の調整を担う。中学校区単位で設置され、県長寿政策課によると、県内には今年4月現在、137カ所ある。
静岡新聞社
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