口臭を気にする人はトラウマのケースが多い
他人のは「クサい……」と感じても、自分のこととなると気付きにくい口臭。そのメカニズムと原因について、東京歯科大学で口臭について研究する日本口臭学会の角田正健会長に聞いた。
そもそも、どうして口はクサくなるのか?
「口臭にはいろいろな原因があるのですが、8割以上は口の中に原因があると言っていいでしょう。例えば、唾液のサンプルを取って、ひと晩培養してみると、すごい悪臭が発生します。これは唾液の中に細菌がいて、タンパクを分解し、細菌が増殖する過程で臭気が発生する。同じことが口の中でも起きるわけです。
とりわけ『クサい』と第三者から指摘されるニオイはメチルメルカプタンという揮発性の硫化物で、アンモニアの約2万倍も臭気が強い。ほんの微量でもわれわれの嗅覚を強烈に刺激します」
この口臭、誰にでもあるもので完全に消すことは不可能。それでも気にしてしまう人は多く、下記のようなケースが増えていると角田会長は言う。
「問題なのは、第三者からすればにおわないレベルなのに、本人が過剰に口臭を気にするケースが増えていることです。
今、若年層を中心に清潔願望が強い時代ですから、口臭があるだけで人格まで否定されかねない。そんな強迫観念が年々強くなっているような印象があります。本人は歯磨きや口の中の手入れもキチンとしていて、口臭についてなんら問題はないレベルでも自信が持てず、自分の口臭が気になる。それはちょっとしたきっかけが原因となってトラウマになっていることが多々あるようです」
そのきっかけとは、思春期に受けた何気ないひと言だ。
「私が同じような悩みを持つ人に『いつ頃から気になりますか?』と質問をすると、中学時代、同級生に『おまえの口はクサい』と言われてから、自分の口臭が気になるようになったという人がいます。実際に口臭があるほかの人のデータを見せて、本人と比較して『気にするレベルではない』と説明するのですが、なかなか本人は納得しない。
このような人の場合、メンタルのケアが必要な場合があります。口臭は、歯科だけの問題ではないのです」(角田会長)
口臭が気になる人は、まずは検査をしてもらおう。どういった治療が必要か、もしくは単なる思い過ごしか分かるはずだ。